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北海道うちゅう旅行記(18):便所星人

10時頃、私と乗騎かもしかⅡ号は、浜頓別のまちに入った。
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右はオホーツク海、左はクッチャロ湖。当然、雨はざんざん降っている。

久しぶりにまちらしいまちで、市街をクネクネ曲がっていたらセイコマがあった。少し休むとしよう、少々もよおしても来たし。
ところがトイレはふさがっており、その前に2、3人の行列が出来ている。代数の行列は高校の頃から苦手だが、けしきとしての行列は待てば良い。というわけでとりあえず外に出て、一服点けることにした。

場所が場所だけあって、次々にライダーがやってくる。彼らと言葉を交わしつつ、煙を吸ったり吐いたりしていると、地元のおばあやんが話しかけてきた。
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お兄ィちゃん方、火ィつけてチョーダイ。兄ィちゃん方見てたら吸いたくなってねェ。

私は火付けが好きだから、はいどうぞと点けてやる。それをしおに、おばあやん私をつかまえてぶつぶつと言う。
要するに、シカには気を付けろ、一匹飛び出したら次々に出てくる、ウチの甥も軽に乗っててそれでやられて大変な事に、などということだ。

こういうおばあやんの話には、時間がかかるものと相場が決まっている。ものすごく気が短い私がそれにつきあってるのはほかでもない、おばあやんもまたいいヒマつぶしだと、便所行列がヒケるのを待っているからだ。というわけでおばあやん去りし後、トイレに向かえば空いたどころか、まださっきの行列が、そのまま短くもならずに並んでいる。

あきらめて外に出る。もちっと時間をつぶす工夫をせねばなるまい。というわけで、小雨になったのを幸い、少々ガタが来たディスプレイの増し締めなどをする。
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もうエエカゲンええじゃろう、とトイレに向かうと、行列は全くそのまま。
やれやれと外に出て、ぼんやりと雨の空を眺めつつ、買った飲料をちゅうちゅう吸う。とそこへ、珍しいマシンがやってきた。
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前2輪後ろ1輪。ピアッジオの3輪バイクだ。先ほど路上で見かけもした。中京圏から来たそのライダーは、何となく他のライダーの固まりから離れている。その気持ちやそうなった事情はスッと想像できるので、私から話しかけて時間をつぶす。

さあ、もうええじゃろ。
ところがトイレの列は全くそのまま。30分以上が過ぎている。列の先頭のおっちゃんも、いらだっているのがはっきりわかった。

そこへ私がすぅ~と近づいて、おっちゃんの目の前のドアすぐに立つ。
「あ~、空きませんねェ~。」と私。
「・・・・・・」
「ずいぶん長いッスねェ~。」
「・・・・・・」
「ドアぁ、蹴っ飛ばしてみましょうか。」と軽くつま先をかする程度に当てる。
先頭のおっちゃん、ぎょっとした顔になる。もちろん私は、中に聞こえるように言っている。

もっとぎょっとしたのは、籠城中の便所星人に違いない。その証拠にすぐガサゴソと音がして、リーマン風のおやじがまろび出てきた。どうも垂れていたのではないらしい。対して行列の男女はおっちゃん以下、みな笑いをこらえており、その視線にさらされて、便所おやじはそそくさと店を出て行く。

このあたりの呼吸は、武道を学ばせて頂いたおかげというものである。ゆえにその後はサクサクと列が進んで、私もさっぱりさせていただいた。やれ、ありがたや。
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それやこれやで時間は取ったが雨の中、また元気に走り出す。
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次なる目標は宗谷丘陵だ。
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プロフィール

九去堂

Author:九去堂
乗騎と、美酒と、かくもロクでもないこの運命を讃えて


九去堂(きゅうきょどう)、またの名を他莫阿弥(たもあみ)、逐電齋、不羈庵(ふきあん)。賭場往来人、ケロ教徒、大学院デビューの不良。天涯孤独にしてあるじを持たず。よく酒を飲み、煙をふかし、馬に騎り、わずかに稼ぐ。世になきものはこの手で作るべしと思へり。晴読雨読、時に刀槍を振るう。振らば稽古なりとも、仇なさぬに得物を当てるを嫌う。死後に世無く、生前も無し。バクチを嫌い仏法を好むラララ科学の子なれば、神無くまた唯物の誤りをも知る。

人知らずして憂いなし。

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